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2016年11月14日(月)

ルートガー・デデリッヒ教授 岐阜のポテンシャルに感動

デデリッヒ教授来日の2日目。デデリッヒ教授にぎふのポテンシャルを体験していただこうと、魅力ある岐阜県から悩んだ挙句、東濃地域へご案内しました。

早朝から車を飛ばして恵那市にある金子建築さんのZETH(ゼロエネルギーティンバーハウス)モデルハウスへ。
朝の寒い時間帯での室内の暖かさを体験していただく予定でしたが、この日は快晴で、比較的外気温も暖かく残念。
金子社長と、パッシブハウスコンサルタントの渡邉さん、建築部長の堀さん、ドイツのエネルギーコンサルのクーラー・アンドレアさんと一緒に、木造住宅について会話が盛り上がりました。何度もドイツに行かれた金子社長との最初のテーマは、やはり熱と湿気環境。

そのまま、ドイツと恵那市の地域経済の話題にまで及び、価格戦略や地域でとれる素材を用いた建材開発、森林管理の方法の差異など、濃密な時間を過ごしました。

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そのまま話していると時間が無くなるため、途中で切り上げて、木ポイントの市場へ。競りが行われる会場で、木材製品の価格や課題を見せていただきました。
LVLで作られた加工場や、集成材の倉庫など、エンジニアードウッド黎明期の建物も非常に興味深く見られていました。

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その後、中津川市加子母へ移動し、山から建築までの一連の流れを中島工務店の中島大地さんのコーディネートで見ることができました。

まずは、加子母森林組合の土場から。「美林萬世之不滅(びりんばんせいこれをたやさず)」のスローガンをもとに、30年間隔の森づくりを説明いただきました。長期目標の理想の山を見ながら森林管理をしている状況に感動。SGEC森林認証制度も取得し、持続可能な管理状況を見ていただきました。

しかし、ここでもいろいろな課題が・・・。30年前は6000m3/年の出荷が現在では倍の12000m3/年に増加と良い傾向のようですが、売り上げは半分、会社数も半分になってしまっているとのこと。これを打開すべく、加子母全体での付加価値を高める取り組みも始まっています。

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次に来たのは「ふれあいのやかたかしも」。中津川市の職員の方に、ヒノキ美林の話と、姫路城の西の心柱に提供した話をいただきました。解体時の写真や、1/3のレプリカの柱で、木材の性質や、大工技術を見るこちができました。

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次は「ふれあいコミュニティセンター」です。建築家は世界的に有名な安藤忠雄さん。
デデリッヒ先生の目の色が変わり、建築少年になったように写真を撮りまくっています。

安藤さんはRC造で有名で、この施設はご存知なかった様子。これだけの規模の木造建築は唯一でしょう。この建物が、世界的に発表されていないのか不思議がっておられました。もっと積極的にアピールすべきだと盛んに言われました。

この施設で作っている干し柿にも興味芯々でした。今の季節は完成品が無く、食べることができませんでしたが、生柿を召し上がっていただきました。

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いよいよ、製材です。加子母の「マルワイ製材所」に伺いました。
到着早々、丸太の皮むきを見ましたが、樹皮はどう活用しているかとの質問が・・・。こちらでは、以前はお金を払って産業廃棄物だったが、現在は利用される方に無料で引き取ってもらっているとのこと。

丸太からの製材を見たり、人工乾燥の施設を見ました。乾燥庫は最近導入したもので、温水をつくって主に中温乾燥を行っているとのこと。樹皮を燃料にすることも試作したが、乾燥させないと、火力が出ないとのことで、この規模ではなかなか難しいとの返答。
地域でまとめれば事業にならないかと、常に地域経済のことを考えられている様子です。

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さらに、「東濃ひのきの家プレカットセンター」に。

入って早々のところに解体された木材が。現在修復中の三重の塔の木材でした。
当時から橋を解体したリユース材が使われていたようで、デデリッヒ教授もひたすら感心。ちょうど前日の学生向けのレクチャーでその話題を話されたばかりでした。
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ここでは、効率的な加工木もたくさん見ることができました。img_2749_r

あたりは暗くなっていましたが、さらに続きます。建築中の現場も見せていただきました。

ちょうど、断熱施工が終わったところで、中島工務店ならではの真壁づくりで、断熱材が丁寧に施工されていました。

これには、デデリッヒ教授とクーラーさんも関心。とりあえず現場が非常にきれいで、木材の養生も丁寧。ここまでの施工はドイツでもなかなかないとのこと。
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この日の最後の見学は、「社寺工場」。日本建築の粋が集まっています。工匠の加納さんから様々な図面や継ぎ手を見せていただきました。下の継ぎ手は宮島継ぎ。格子天井の部材を直列に継いでいます。

デデリッヒ教授ももともとは大工を経験されていましたが、さすがにこの加工には脱帽の様子。img_2777_r

工場の上には、巨大な空間があります。何をするところかわかりますか。img_2802_r

実は、屋根の原寸図を書くところです。実際、現在建設中の屋根の図面が書かれています。アップで映すとしたのような墨で書かれた図面があります。この中に、3次元的な情報も読み取れるようです。この原寸図から紙に写し取って加工するということです。

ドイツでも、同じような加工をするとのことで、非常に興味深く見られていました。img_2792_r

ハードスケジュールの一日でしたが、最後は、地元の名物料理「鶏ちゃん」で夕食です。中島紀干社長や、視察先の方々、アカデミー卒業生まで集まって、さらに木の話題で盛り上がりました。

イタリアンやフレンチではなく、地元の方が食べるような食事での歓迎にいたく感動されていました。

その日は加子母にある、牧戸山荘に宿泊。人生初の畳での就寝だったようです。

翌日も快晴。朝露に光る畑をみながら散歩されていました。

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午前中は、樹齢1000年を超えるといわれる加子母の大杉を見て、道の駅で中部名物モーニングを堪能。

その後、改修を終えた地歌舞伎の明治座へ。大道具を手伝っている女性の方に丁寧に案内いただきました。奈落の中の回転舞台や、屋根の杮葺き(クリとサワラ)、14Mを超える梁など、見どころいっぱいでした。

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ようやく、アカデミーへの帰還です。

アカデミー学園祭「翔楓祭」真っ只中でした。。。

ですが、やることがあります。これからの両校の交流をどのようにしていくか。これまでの3日間で、共通、共感する部分がかなり重なっています。

グローバルな視点を持ちつつ、地域で活動するのが重要との共通認識のもと、学生や教員間の交流を計っていく具体的な道筋を話し合いました。img_20161112_152652_r

翌日は最終日。最後大舞台の「日独木造建築シンポジウム」が控えています。前日はホテルで講演資料を遅くまで調整していただいていたようです。さすがに強行スケジュールで少しお疲れの様子。

午前中は、うだつのあがる街並みを見ていただき、アカデミーの立地する美濃市の歴史を感じていただきました。電線が気になっていた教授には、久々の電線地中化の地域。そこに古建築が合わさって、一気にテンションが上がりました。

アカデミーでは、「翔楓祭」を見ていただきながら、本学の施設のポテンシャルを確認いただきました。

普段は案内しないような橋の下の木構造や・・・img_2871_r

建築関係者が注目する製材棟、加工棟、木材開放試験室まで。

特に試験場や製材棟はロッテンブルク大にはない施設で、非常にうらやましそうに、写真を撮られていました。

また、この試験場で試験した結果が、初日に行ったメディアコスモスの屋根に使われていることを聞くと、林業学校だからこそ、木材活用のためにも、その成果を活かすためにこういった施設が必ず必要で、ぜひロッテンブルクでも実現したいと張り切っておられました。

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到着して4日目。非常にタイトなスケジュールの中、岐阜の一部地域だけ回られましたが、やはり聞くだけではわからなかったことが見て聞けて実りが多かったとのお言葉。

来年以降はさらに学生も交えた連携が進んでいく予感がします。

准教授 辻充孝